About Base Food
「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」そんなミッションを掲げるベンチャー企業がある。完全栄養の主食「BASE NOODLE」と「BASE BREAD」を開発・販売している、創業わずか3年目の「BASE FOOD」社だ。2019年4月末時点で累計50万食を売り上げ、話題沸騰に。創業者の橋本さんは栄養分野の出身かと思えば、IT系出身。グーグルマップで住所を確認すると、そこは品のいい一軒家。気になりすぎる「BASE FOOD」社にNEXT REALが潜入。
創業のきっかけ
ビジネスパーソンとして普通に暮らしているだけなのに不健康?
- 本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます。(取材日は製品リニューアルのプレス発表日だった。)GENには毎日、BASE BREAD食べているメンバーがいたり、ビジュアルのモデルさんもBASE NOODLEを食べていたりと、社内でも話題のBASE FOODさんにようやく来れました。早速、BASE FOOD創業のきっかけを教えてください。
- 僕はIT系の会社出身です。この話をすると、出身企業が不健康みたいに思われるので、最初に断っておきますが、そんな事はありません。笑 会社員時代に気がついたのは、日本のビジネスパーソンの生活って本当忙しいことです。その中で、僕自身健康を維持しようと、ジムに通い、睡眠時間を確保し、と取り組みました。でも食だけは難しかった。仮に19時まで働いて、自分で作って食べようとすると、退社後に買い物に行って、作り、食べる頃には21時過ぎ。時間も遅いし、毎日続けるのはしんどい。。
- わかります。それで外食が増えます。。。
- そうなんです。ただ、一人で食べれて、お酒飲まなくていい晩御飯の店は少ない。それで、ラーメン、カレー、中華料理、コンビニ。そのローテになっちゃいます。栄養バランスはどんどん悪くなりますよね。そこで、サプリメントも試しました。でも、牛丼とサプリメント10個とかってどうなんだろう。これは詰んだなって。実際、どうすれば健康になれるかは知ってても、そうできる人は本当に少ない。毎日専業主婦が栄養バランスの取れた食事を作ってくれて、19時に退社して、19時半に食事できれば別ですが。
- そういう時代でもないですよね。
- おっしゃる通りで、パートナーがいても、共働き生活をしている場合が多い。結果的に、”栄養”がおろそかになって、体調が優れなかったり、風邪をひきやすかったりと、今時のビジネスパーソンが普通に生活して健康って難しすぎない?と。何か解決する方法はないか?そう感じたのがキッカケです。
好きなものを食べても健康でいられる未来を
- 解決へのアプローチが色々ある中で、主食の完全栄養化を目指したのはなぜですか?
- 健康には大抵、努力が求められます。〇〇を食べるな。〇〇をするな。〇〇を毎日食べなさい。さあ、ジムへ行こう。それを習慣にできる人は健康です。でも、ラーメン食べるな。と言われても、どうしても食べちゃう人もいます。
- そうですね。(笑) GENにもそういうメンバーいます。
- だから、そこを追求しちゃうと、ディストピアだなって。例えば、好きなものも食べずに、完璧な栄養素が含まれる流動食飲んで生きて、健康になったとしても幸せなのか。むしろ、好きなもの食べて健康がユートピアだよねと。それで毎日食べる、主食に栄養素をバランスよく含ませるイノベーションに成功すれば、今の食文化やライフスタイルはそのままに、健康を手にできる。忙しいビジネスパーソンが意識しなくても健康でいられる社会を実現できる。と思い立ち開発に着手しました。
商品化されたBASE NOODLEとBASE BREADのパッケージ。一食に必要とされる栄養素が含まれる一方、糖質や脂質などはカットされている
商品開発の日々
スーパーとYouTubeで探した未来
- 最初に主食の中でも麺の開発に着手されたそうですが、ご自身も経験のない分野への挑戦ですよね。どうやって始めましたか?
- 食品開発者としての知識がなかったので、栄養士の友達に栄養バランスの基準と、計算方法を聞きました。製麺機をAmazonで注文して、スーパーで乾燥食品を片っ端から探し、栄養バランスの良い組み合わせを見つけ、YouTubeで「パスタの作り方」動画を見ながら食材を混ぜるとこから始めました。
- Amazon、YouTube、急にIT出身感が出てきました。
- そうですね。そこは、現代っ子です。笑
- そうして作った第一号のお味はいかがでしたか?
- 当然、まずいわけです。煮干し、大麦若葉、ココアを混ぜたので。麺の形にすらならない、本当にまずい黒いペーストが第一号でした。そこからはひたすら改善です。煮干しとココア混ぜたらそりゃまずいので、合う食材を使わないといけないこと。つなぎになる食材がないと麺としての形を保てないこと。一つ一つ解決していきました。
- よくめげずに続けられましたね。
- 結果は、冷静に受け止めていました。そもそも、人類は5千年から1万年食べてきたわけです。主食に栄養素を含められれば、日本の健康問題も、アメリカの肥満の問題も、途上国の栄養失調の問題も解決できる。誰かやってそうなのに、できていない。それが簡単にできてしまったら、今まで人類は何やってたんだ!?感満載じゃないですか。だから、できない理由があるんだろうな。と思ってやっていました。
橋本は麺職人になったらしい
- 試作を始めて数ヶ月で独立されたそうですが、周りの人たちのリアクションはいかがでしたか?
- 友人たちは、「あいつは麺職人になったらしい。」って言ってました。たしかに僕自身、仙人のような生活をしてました。朝起きて、10kmほどランニングして、休憩して、あとは、ひたすら麺づくり。試作品も100以上作りました。
- それは、麺職人ですね。笑 ずっと一人で開発されたんですか?
- いえいえ。一人で始めた開発ですが、栄養価の先生。レストランのシェフ。お医者さん。旨味、甘み、苦味に詳しい人。結局、50人ぐらいが協力してくれました。最初は、”麺職人”とみられても、主食のイノベーションは、チャレンジする価値のあること。つまり、日本のような少子高齢社会が豊かに発展する上で必要なことで、食や健康の分野でリードしている日本で成功させ、世界のモデルケースとして輸出できる社会的インパクトの大きい事業になる。と説明すると、応援してくれました。また、試作品が良くなってくると、最初は”そんなことはできないよ”と言っていた方々も”あとは苦味をどうするかだね”と反応が変わっていきましたね。
- 「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」この夢に共感が集まっていったんですね。製品開発で一番大変だったのは?
- 仮説を立てて、理論的には良くなるはずなのに、うまくいかない時ですね。もしかしたら、これ以上改善できないかもしれない。美味しくできないかも。という壁にぶつかることが何回かありました。それが一番辛かった。いわゆるスランプタイムです。
過去の自分では超えられない
- そんな時はどうされたんですか?
- アインシュタインの言葉に「いかなる問題も、それをつくりだしたときと同じ意識によって解決することはできない。」というのがあって、過去の自分を超えるには、新しいインプットが必要だと教えられて。壁にぶつかった時は、とにかく人に会ってみたり、今までと違ったアプローチを試しました。すると、僕が考えつかなかった手法とか、知らなかった原材料に出会えて、良い方向に進めました。自分はシンプルに体に良くて味のいい製品を作れば良い。そう思って1年近く、トライアンドエラーを繰り返しているうちに、加速度的に味や食感が良くなり、商品化へと向かいました。
- 商品化にあたり、製造はどうされたんでしょうか。
- 試作中にGoogleで製麺できるところを検索して、岐阜の製麺所を見つけました。グルテンアレルギーのある子どもにも配慮していることをウェブサイトで知って、安全性、開発力が高いこと、そして、何よりビジョンがある製麺所だなと感じて、試作段階の麺をジップロックに入れ、岐阜の工場まで持っていき、試作品片手に直談判しました。情熱を評価してもらえて、生産していただけることになりました。
クラウドファンディングで得たのはプレッシャー
- 製麺所も納得のクオリティーになっていたんですね。資金集めはクラウド ファンディングを利用されたそうですが。
- 実はクラウドファンディングは資金集めというより、テストマーケティングとして行いました。どう売っていくか。どう説明するのか。そこを見極めたかった。結果的に資金も集まりましたが、応援してくれる人が増えたのは本当に大きかった。今まで1人やってきたことに、友人やその友人が一人5000円とか出してくれるわけです。となると、孤独じゃなくなる。責任感が出て、ギアが変わって、もう仙人のような生活はできないなと。笑 それがすごく良かったです。
- いい意味でのプレッシャーをもらったんですね。この頃、メンバーも増えたとか。
- 前職の同期だった高橋が参画することになりました。彼は、クラウドファンディングで、本当に良いと思って20食購入してくれてたそうです。ITもいいけど、こういうリアルプロダクトもいいよねと。同期の集まりで高橋に会った時、「僕はパスタよりラーメンが好きだ」「ラーメンを食べて不健康になる世の中はおかしい。だから、橋本、ラーメン作ってくれ。」と言われました。僕はパスタ作りで忙しかったので、「本当にBASE RAMENが人生を良くすると思うなら、高橋がうちに入ってラーメン作ってくれよ。」とオファーしたら、「確かに。」と快諾してくれました。実は高橋も起業を考えていたタイミングだったそうです。Day1のミーティングで、僕らまだパスタも販売開始していないな。そしたらまずはそれをやらなきゃな。という事に気がつき、すぐにラーメン作りとはなりませんでしたが。笑
商品化されたBASE NOODLEは手軽に栄養バランス抜群の食事がとれるだけでなく、ソースや付け合わせをアレンジして楽しめる
販売戦略について
レビューの向こう側の共通項を探せ
- 販売はスムーズに行きましたか?
- 現実問題として、スーパーにも、コンビニにも置いてもらえないわけです。それで、ネットで売っていこうと思いました。今も、自社ECサイトが中心です。PRはSNSや一部広告。それしかできることも無かったですし、それが王道だと感じています。今の時代は、良いものが勝手に広まりますよね。僕らも、良いもの作れば、それ自体がPRになり、ユーザーの紹介がバズを生み出し、製品が広く認知されるのを実感してきました。
- それが功を奏して、50万食の売り上げにつながったわけですね。秘訣はありますか?
- どうなんでしょう。僕は、せっかくベンチャーとして食品自体をイノベーションしたのだから、食品の売り方もイノベーションを起こしたかったんですね。それがモチベーションに繋がるんです。なので、秘訣と言えるほどのものはないですが、シンプルに購入者に聞きまくりました。なんで買ったんですか。もっとどうなって欲しいですか。どうしたら他の人に紹介してくれますか。などなど。そして、それを製品にどんどん反映させています。
- なるほど。要望がバラバラで困りませんでしたか?
- 表面的にはバラバラでも、割と本質的な解がありました。また、本質を理解してくれているお客さんにインタビューすれば、解が見えてくることが多かったです。例えば、「どうしたら友達に紹介してくれますか?」という問いに対して、あるユーザーは「いくら良い情報を持っていても、紹介しづらいんだよね。」と言われました。確かにわざわざ紹介はしづらいかもしれない。でも、もしオフィスで食べていたら「何それ?」と会話が生まれるかもしれない。それで、BASE BREADのように家の外で食べられる製品につながりました。いいお客さんがいて、いい社員がいるからこそ、いい商品が生み出せるんだなと感じています。
現在の社員数は18名。メンバーが増えるにつれて、できることも多くなったという。当日もweb担当者やマーケティング担当が活発に意見交換していた。